夕方の遠野の町

116年目の「遠野物語の日」に寄せて

遠野文化友の会会長を務めております、多田と申します。1910年6月14日に『遠野物語』が出版されてより116年目の今日、私も柳田にならって目前の事実を書き連ねておこうと思います。
まずは6月7日、「一灯で聴く遠野昔ばなし」を開催しました。ろうそく1本の明かりのみで聴く昔話は、「視覚が遮断されて聴覚が敏感になり、お話の世界に没頭できた」や「電気のなかったころにどのように昔話が伝承されてきたか体験出来た」などの感想を頂き好評でした。また、来る6月27日には「教えて!さんさの人」と題し、山口さんさ踊り保存会さまに講師を依頼し、郷土芸能勉強会を開催します。そして7月11日の「遠野遺産フィールドワーク上郷町編」では、地域住民に支えられ、守られてきた遠野遺産を巡ります。

 遠野に住んでいるとこれらのことは当たり前に感じるかもしれませんが、考えてみるとすごいことです。昔話や郷土芸能は無形であり、ビデオもない時代、伝える人がいなければ簡単に途絶えてしまいます。また、遠野遺産にしても、地域住民の理解や協力がなければとっくに寂れていたでしょう。『遠野物語』が書かれた当時、目前の事実として記載されたこれらが、116年たった今でも同様に目にすることが出来るということは、細い一本の糸を綱渡りするかの如く、常に断絶との闘いを乗り越えてきた、まさに奇跡の産物だと言えるでしょう。

 果たして116年後の未来の遠野人は、私の書いたこの文章を読んでどう思うのでしょうか。「ああ、116年前にも同じような文化があったのだな」と思うのか、それとも「へぇ、昔の遠野には、こんな珍しい文化があったのか」と思うのか。

 我々が今、これらの文化を「当たり前」と感じることが出来ているという奇跡。この奇跡を愛し、かけがえのないものと感じ、後世に残していきたいと思う人で構成された民間の集まりが「遠野文化友の会」です。今年から申し込み手続きを見直して、ホームページの申し込みフォームから受付可能になったほか、銀行振り込みにも対応いたしました。この機会に、ぜひ私たちの仲間になりませんか?