遠野少年少女合唱隊の遠野わらべ歌伝承活動 /多田 梨絵

 遠野少年少女合唱隊は昭和62年に遠野地方に伝わるわらべ歌の伝承を通じて、子供たちの情緒を豊かにしようと遠野市により設立されました。現在は、遠野市が一般財団法人遠野市教育文化振興財団に事業を委託し活動を行っています。隊員は遠野市内の小中学生16名。毎週土曜日の16時から市民センター音楽室で市内在住の音楽講師、吉永実千枝先生・菅原美智恵先生の指導の下、練習に励んでいます。

初代合唱隊講師の斎藤政敏先生によると、32年前に合唱隊が設立された当時は全国的に児童合唱団が設立されたブーム期で、その頃からの活動が今も継続しているのは珍しいとのこと。遠野の合唱隊は、わらべ歌の伝承という特別な目的があるからこそ、30年以上も活動が継続しているのだと思います。

さて、令和元年12月1日、遠野少年少女合唱隊は第30回目の記念発表会をみやもりホールで開催しました。第30回記念は原点である遠野のわらべ歌を特集したいと講師方、父母会で気持ちが固まり、発表会1年前から選曲を開始。また、継承すべきわらべ歌のレパートリーを増やすべく、阿部ヤエさんが残した「遠野のわらべうた」の本を読み、学習をすすめました。

大きな動きとなったのは、2年前より合唱隊ボイストレーナーをしてくださっている千葉県在住のソプラノ歌手、千石史子さん・宮城県在住のピアニスト、菅原紀子さんが共にヤエさんの語りの音源からわらべ歌を聞き出し、楽譜起こしに協力してくださったことでした。

お二人は遠野に興味を持ち定期的に遠野を訪れている音楽家で、各地のわらべ歌にも詳しく、数多くの遠野わらべ歌の中から「遠野の四季を招く呼びかけの歌」の多様さに注目し、日本各地・世界各地の同系のわらべ歌や楽曲も紹介してくださいました。

写真左:ピアニスト、菅原紀子さん
写真右:ソプラノ歌手、千石史子さん

第30回記念発表会では、子供達が歌う四季に呼びかける遠野のわらべ歌11曲を軸に、ゲスト出演の千石史子さんと菅原紀子さんが日本各地のわらべ歌、世界各地の季節の歌を演奏してくださいました。観客の皆さんには、めぐる季節を感じていただけたのではないかと思います。

合唱隊の子供達は、わらべ歌が大好きです。わらべ歌の持つ心地よさ、歌詞の面白さ、合言葉のように変化するリズムの楽しさや輪唱を感覚で楽しみ、方言の意味を吉永先生から聞いたり、調べたりしています。

来年は遠野物語発刊110周年を迎えます。合唱隊はこれからもわらべ歌の伝承を通じて、遠野の文化を内外に発信し続けたいと思います。

写真撮影:(一財)遠野市教育文化振興財団